説明
青い星が転がる夜に、
ひとり、スマホの画面をなぞる。
「バいあぐら」
検索窓に打ち込む。
指の震え、少しの逡巡。
正規品か、それとも偽物か。
値段か、それとも安心か。
──保証いたします。
──正規品でございます。
──ジェネリックもございます。
ポップアップの窓が開く。
怪しげなURLではない。
レビューもある。
「彼が元気になりました!」
「まだまだ頑張れます!」
つるかめ薬局。
その名に込められた縁起の良さ。
長寿と繁栄。
人の願いを詰め込んだ、
オンライン薬局の片隅。
通販ならば恥ずかしくない。
誰にも見られず、ポチッとひと押し。
──即日発送!
──中身の分からぬ梱包!
──安心、安全、男の自信!
「これが、今の時代の力か……」
呟きながら、
クレジットカードの情報を打ち込む。
名前。
住所。
メールアドレス。
数日後、ポストに届く。
茶封筒の中に、
青い小さな錠剤が並んでいる。
期待と不安の狭間で、
ひと粒を手のひらに転がす。
──正規保証。
──つるかめ薬局。
──ジェネリック。
誰も知らない、
ひそかな戦いの始まり。
夜がまた、静かに、深くなる。
飲み込む瞬間、
脳裏をかすめるのは、
あの日の自信、
あの頃の輝き。
果たして、蘇るのか。
体の奥底から、
力は湧いてくるのか。
時計の針を戻すように、
眠っていた炎を呼び覚ますように。
──30分後。
──1時間後。
期待の鼓動が、
心臓の奥で脈打つ。
そして──
夜はまだ、終わらない。
期待と、願いと、
小さな錠剤がもたらす物語が、
新たなページを開いていく。
正規保証net窓口の安堵、
そうそれはつるかめ薬局がもたらす
今日から新しい情熱の毎日が始まる
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